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NOVEL / SAMPLE

コンティニューの代償は、あなたの記憶

第3巻 それでも、君に会いにいく

幕間「名前があるうちに」より

「記録することと、誰に開示するかは別問題です」

「研究者っぽい」

「研究者です」

フィアナが初めて少し笑った。

笑った顔を見て、レイスの胸が痛む。

この表情を、明日には知らない人の顔として見るかもしれない。

そう考えた自分が嫌だった。

今の彼女を、未来の喪失として見るのは違う。

「写真、撮る?」

ノエルが急に言った。

「何で」

「今の五人」

「六人です」

ミラが厨房から言う。

「入る?」

「私は撮る側でいい」

「じゃあ五人」

ノエルは小型の記録晶を出した。

フィアナが顔をしかめる。

「何のため」

「忘れた時に見せる」

レイスがすぐ言った。

「それは嫌」

ノエルの手が止まる。

「ごめん」

「記録が嫌じゃない」

フィアナは言った。

「忘れた私へ『ほら、こんなに仲良かった』って突きつける使い方が嫌」

「じゃあ」

「今の私たちが、今撮りたいなら撮る」

ノエルが考える。

「私は撮りたい」

「俺も」

グラン。

「研究用ではなく?」

レイスがルナを見る。

「個人的記録としてなら」

「言い方が硬い」

「撮りたいです」

フィアナがレイスを見る。

「あなたは」

「撮りたい」

「じゃあ撮る」

五人で店の壁際へ並んだ。

ミラが記録晶を持つ。

「もっと寄って」

「狭い」

グラン。

「あなたが大きい」

ノエル。

「俺の責任か」

「半分」

フィアナがレイスの隣へ来た。

肩が触れる。

レイスは何も言わない。

「笑って」

ミラ。

「急に言われると無理」

「レイス、顔硬い」

フィアナ。

「フィアナも」

「私は普通」

「二人とも硬い」

ノエルが笑う。

その笑いにつられて、レイスも笑った。

記録晶が光る。

一枚。

「もう一枚」

「何で」

「最初の、グラン目つぶってた」

「嘘だろ」

「本当」

二枚目。

今度はフィアナがレイスを見ていて、正面を向いていなかった。

「もう一枚」

「何で!」

「フィアナが」

「消して」

「嫌」

「ノエル」

「個人的記録」

食堂に笑い声が残った。

レイスは、その場で写真を確認しなかった。

残すことは、未来の自分を縛ることではない。

今日あったものを、今日あったまま置いておく。

それだけでいい。

試し読みはここまでです。

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