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NOVEL / SAMPLE

コンティニューの代償は、あなたの記憶

第2巻 忘却のセーブデータ

プロローグ「忘れたはずの手順」より

 五人は朝食を済ませ、予定通り北西観測所へ向かった。

 古い石畳は途中から草に埋まり、道の両側には青い花が増えていく。

 花弁が半透明で、朝日を透かすと結晶のように光る。

「記憶草」

 ルナが言った。

「名前、そのままなんだ」

「正確には《忘刻花》。でも俗称は記憶草です」

「触ると昔のこと思い出す?」

「触ると手が青くなります」

「だけ?」

「三日くらい落ちません」

「じゃあ触らない」

 ノエルが一本摘んだ。

「聞いてた?」

「聞いてたから触った」

「何のために」

「レイスが嫌がるかなって」

 ノエルが花を近づける。

 レイスが避ける。

「やめろ」

「反応よし」

 そのやり取りを見て、フィアナが笑う。

 普通の朝だった。

 レイスは、その普通さを壊したくなかった。

 だから最初の異変に気づくのが遅れた。

 道の先に、小さな荷車が倒れていた。

 車輪が外れ、荷物が斜面に散らばっている。

 近くに人影はない。

「止まって」

 ノエルが片手を上げる。

 全員が止まる。

 グランが盾を前へ。

 フィアナが剣の柄へ手を置く。

 ルナは腰の記録晶を取り出す。

 レイスだけ、一歩遅れた。

 遅れたはずだった。

 それなのに、次に起きることを身体が知っていた。

「伏せて!」

 叫んだのはレイスではない。

 フィアナだった。

 彼女はレイスの襟を掴み、ほとんど投げるように地面へ引き倒した。

 その頭上を、銀色の細い矢が通過する。

 一本。

 二本。

 三本。

 木の幹に刺さる。

 遅れて、斜面の上から鐘骸獣が飛び出した。

「左二!」

 レイスが叫ぶ。

 フィアナはもう動いていた。

 左へ二歩。

 そこで剣を振る。

 ちょうどそこへ獣の首が入ってくる。

 一閃。

 青黒い殻が割れた。

「後ろ!」

 今度はフィアナが叫ぶ。

 レイスも、考える前に右へ転がっていた。

 背後の地面へ槍が刺さる。

 見えていなかった。

 けれど避けた。

 グランが二体を盾で弾き、ノエルが木の上から短剣を落とす。ルナが記憶晶を起動し、獣の胸部に走る薄い線を指した。

「そこが核!」

 フィアナが踏み込む。

 レイスも同時に走った。

 彼女が右。

 自分が左。

 説明していない。

 合図もない。

 なのに、互いの動きがわかる。

 フィアナの剣が獣の注意を引き、レイスがその下へ潜る。

 懐中時計の鎖を握ったまま、拾った石を核へ叩きつけた。

 割れた。

 獣が崩れる。

 静かになった。

試し読みはここまでです。

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